[解説]
アシメトリー(左右非対称)のドレスに代表される、ひねりの利いたデザインで知られる注目株のブランドです。マニッシュなラインを得意としています。アン・ヴァレリー・アッシュ(Anne Valerie Hash)氏はオートクチュール(注文服)の専門校を卒業しているだけあって、手仕事の造形美に切れ味を感じさせます。
かなり低い位置に袖付けしたジャケットや、ボタンとボタンホールの数が合わないシャツなど、「服」の常識を覆す試みを続けています。あちこちに穴を開けた長袖Tシャツなんて、まだ遊びが少なく見えるほどです。「反逆児」マルタン・マルジェラ氏に通じるアバンギャルドな仕掛けです。
メンズ物をレディース物に仕立て直す「脱構築(deconstruction)」の手法もアッシュ氏の得意技と言えるでしょう。12歳の少女にメンズの服を着せて、オーバーサイズ(ブカブカ)状態にし、その写真からパターンを起こすというアプローチでも「知られています。サスペンダー付きパンツのようなメンズライクなアイテムも手がけています。
プレタポルテ(高級既製服)よりもオートクチュールが先行する形でスタートしています。2004―2005年秋冬パリ・オートクチュールコレクションでは清楚な印象を与える白いアシメトリーのドレスが目を引きました。全体の色調は白と黒のモノトーン。シルエットは細身。マニッシュなラインで知られてきたアッシュ氏ですが、今回はシースルー素材を使ったセクシーでフェミニンな作品が登場したのは、一つの変化と言えるでしょう。
●ブランドデータ
[本国] フランス(パリ)
[経営・日本での展開]
日本法人はまだないようだ。主にセレクトショップでの取り扱いとなっている。
[歴史]
アン・ヴァレリー・アッシュ(Anne Valerie Hash)氏は1971年、パリで生まれた。パリの名門モード学校、エコール・ドゥ・ラ・シャンブル・サンディカル・ラ・クチュール(the Chambre Syndicale School of haute couture)で学ぶ。95年卒業。
同校はオートクチュールのテクニックを学べる貴重な教育機関。渡米し、美術史とドローイングを学ぶ。「シャネル」「クリスチャン・ディオール」「ニナ・リッチ(Nina Ricci)」「クリスチャン・ラクロワ」などのメゾンでアシスタントを経験。2000―2001年秋冬パリ・オートクチュールコレクションでデビュー。
[現在のデザイナー] アン・ヴァレリー・アッシュ氏
[キーワード] マニッシュ、アシメトリー、オートクチュール
[魅力、特徴]
構築的なデザインが才能のきらめきを感じさせるます。クチュリエ特有の上質な仕立て。前衛的ではあっても、奇抜すぎるということはなく、上品。
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